新認定医療法人制度
平成26年の医療介護総合確保推進法による改正で、「持分なし」への移行を促進する制度として認定医療法人制度が時限措置で創設されました。
しかしこれは、出資者が持分を放棄する事により他の出資者の相続税や贈与税を不当に減少した場合には、医療法人を個人とみなして贈与税をかける、相続税法第66条の4項の規定がネックとなり、持分なしへの移行があまり進みませんでした。
そこでこの規定を緩和する制度が今回の医療法改正+税制改正で創設されました。
改正前の贈与税を課さない要件。
(1)運営組織が適正であること。
(2)役員等のうち親族・特殊関係者が1/3以下である事。
(3)法人関係者に対し、特別の利益を与えない事。
(4)残余財産を国・地方公共団体等に帰属させる事。
(5)法令に違反する事実、帳簿書類の隠ぺい等の事実その他公益に反する事実がないこと。
(1)は細かく規定があるので要件を満たす事は簡単ではないのですが、、ネックとなっていたのは(2)の親族要件でした。
今回の改正でこの親族要件が取り払われました。さらに認定医療法人の申請期間が3年延長され、平成29年10月1日から平成32年9月30日までになりました。
ただし追加事項として、持分無しへ移行してから6年の間に認定を取り消された場合には贈与税が課税されますので注意が必要です。
この制度は出資持分払戻しにより、医療法人の継続が困難にならないようにする制度ですが、相続税や贈与税を不当に減少させかねない問題も有り、その適用は厳格にされていました。今回の改正で持分無しの医療法人への移行が、しやすくなった感はありますが、あくまで財産権の放棄だという事に気をつけて下さい。
また一部改正点は不明な部分もあり、持分無し医療法人への変更については税制上十分に注意が必要ですので、くれぐれも顧問
税理士とご相談下さい。
医療法人制度の見直し
平成28年9月1日から施行されている第7次医療法改正の医療法人制度の見直しについては、下記の点が盛り込まれました。
1.医療法人のガバナンス強化
2.医療法人の経営の透明性の確保
(1)会計基準の適用・外部監査の義務付け
(2)計算書類の公告の義務付け
(3)関係事業者との取引状況に関する報告書の提出
3.医療法人に『分割』制度創設
4.社会医療法人の認定要件の見直し
1.医療法人のガバナンス強化は、医療法人の理事会の設置・権限や役員の選任方法等を医療法に規定して明確化するものです。
また、医療法人の業務執行を担っている理事長及び理事の責任の大きさを勘案して、一般社団法人等と同様に、理事長及び理事の忠実義務、任務懈怠時の損害賠償責任等を規定したものです。
①役員の選任及び解任
医療法人の役員の選任及び解任に関する改正項目には、例えば医療法46条の3の5③で社員総会の秩序を乱すものの退場を求める規定が設けられています。
②理事長の権限及び理事の義務
医療法人の理事に関する改正項目には、例えば医療法46条の6の3で理事は医療法人に著しい損害を及ぼす事実を発見した時には直ちに監事に報告しなければならない事が設けられました。
③定款又は寄付行為の変更に関する経過措置
医療法人は定款の変更が必要となる場合は、平成28年9月1日から2年以内に定款の変更をしなければなりません。
2.医療法人の経営の透明性の確保に関する改正は、以下の3点となります
(1)会計基準の適用・外部監査の義務付け
医療法人の経営の透明性を確保するために、一定規模以上の医療法人に会計基準の適用を義務づけるとともに公認会計士等による外部監査を義務付けるというものです。
(2)計算書類の公告の義務付け
医療法人の経営の透明性を高める必要があるとして、一定規模以上の医療法人に、計算書類の公告(官報又はインターネット上での公開)
を義務付けるというものです。
(3)メディカルサービス法人との関係の報告
医療法人といわゆるMS(メディカルサービス)法人を含む関係当事者との関係の透明化・適性化が必要かつ重要との観点から、毎年度、医療法人とMS法人との関係を都道府県知事に報告させるというものです。
*3.4については割愛させて頂きます
地域医療連携推進法人の創設について
地域医療連携推進法人とは、平成25年に「非営利を前提とするホールディングカンパニー型の法人」の必要性を提唱し、安倍首相がアメリカにある医療法人のような、ホールディングカンパニー型法人制度の創設を日本再興戦略に盛り込んだ事がはじまりです。
その後いくつかの案を経て、「地域医療連携推進法人」という医療法人の創設で方針が示されました。
具体的に言いますと、ある地域の医療法人が複数集まり、一つの法人を作ります。そしてそれぞれの医療法人が持っている利点を相互に共有したり効率を図ったりします。
1.法制度上のメリット
①病床融通・・・病床過剰地域においても、地域医療構想(*)のために必要な病床融通を、参加法人間で行う事を可能とする。
*地域医療構想とは・・・地域ごとに必要な医療機能を考え、地域医療のあるべき姿を示す骨組みです。
例えば病院がそれぞれ持っている病床(入院ベッド)の機能を明確にする「病床機能報告制度」は既に始まっています。
②資金貸付・・・参加法人に対する資金貸付を可能とする。
2運営上のメリット
①患者紹介の円滑化・・・カルテの統一化、重複検査の防止、スムーズな転院
②医薬品・医療機器等の協同購入・・・経営効率の向上
③医師・医療機器の再配置・・・法人内の病院間での適正配置
地域医療連携推進法人は既に設立されていますが、まだ大きな動きとなるまでは至っていません。
実際にはグループ内の統制や、制度の変化に係る労力や賃金など問題点もあり課題があるようです。
平成25年4月1日以後開始する事業年度からの取扱
各事業年度において支出する交際費等の額(中小法人については、交際費等の額のうち年800万円を超える部分の金額)は、損金の額に算入しない。
各事業年度において支出する交際費等の額(中小法人については、交際費等の額のうち年800万円を超える部分の金額)は、損金の額に算入しない。
中小法人・・・事業年度終了の日における資本金の額又は出資金の額が1億円以下の法人をいい、普通法人のうち事業年度終了の日における資本金の額又は出資金の額が5億円以上の法人など一定の法人による完全支配関係がある子会社等を除く
つまり、中小法人に該当すれば交際費等の金額は年800万円まで全額損金になるということです。
平成26年4月1日以後に開始する事業年度からの取扱
イ.交際費等の額のうち、接待飲食費の額の50%に相当する金額は損金の額に算入することとされました。
この接待飲食費とは、交際費等のうち飲食その他これに類する行為のために要する費用(専らその法人の役員若しくは従業員又はこれらの親族に対する接待等の ために支出するものを除きます)であって、法人税法上で整理・保存が義務付けられている帳簿書類に次の事項を記載することにより飲食費であることが明らか にされているものをいいます。
1. その飲食費に係る飲食等のあった年月日
2. その飲食費に係る飲食等に参加した得意先、仕入先その他事業に関係のある者等の氏名又は名称及びその関係
3. その飲食費の額並びにその飲食店、料理店等の名称及びその所在地
4. その他飲食であることを明らかにするために必要な事項
※1人当たり5千円以下の飲食費については、従来どおり交際費等に該当しないこととされています。
ロ.中小法人については、上記イによる損金算入と、年800万円までの損金算入とのいずれかを選択適用できることとされました。
中小法人以外については、今まで交際費等の全額損金不算入でしたが一部損金算入が認められることとなりました。
また、中小法人で多額に交際費等を支出する法人は、朗報になるかもしれません。