決算対策:棚卸資産の評価損を計上して節税
期末在庫の評価⾦額は利益の計算に⼤きく影響します
商品を仕⼊れた⾦額が全て経費になると考えていませんか?
売れ残っている商品(在庫)の⾦額は仕⼊⾦額から差し引かなければなりません。
期末に⼤量の商品を仕⼊れることは、在庫を増やすだけで、消費税の課税仕⼊れが増加すること以外にはなんの節税にもなりません。
しかし、期末在庫の評価⾦額を減らすことは節税につながります。評価⾦額ということがポイントです。
・在庫評価損の計上
在庫の状況、状態が⼀定の事実に該当する場合、在庫の評価を実際の仕⼊価額(帳簿価額)でなく、時価(処分可能価額)で評価し、その差額を評価損として計上することが認められます。
・評価損が計上できる⼀定の事実
1. 災害により著しく損傷したことにより棚卸資産の価額(時価※ 1)がその帳簿価額を下回ることになったこと
2. 著しく陳腐化したことにより棚卸資産の価額がその帳簿価額を下回ることになったこと
3. 会社更⽣法による更⽣計画認可の決定があったことにより、その棚卸資産について評価換えをする必要が⽣じたこと
4. その他これらに準ずる特別な事実が⽣じたことにより、棚卸資産の価額がその帳簿価額を下回ることになった場合
※ この場合の時価は、その棚卸資産が販売されるものとして通常付される価額、いわゆる処分可能価額
(1)「著しく陳腐化」とは
• いわゆる季節商品で売れ残ったものについて、今後通常の価額では販売できないことが実績その他の事情に照らして明らかであること。
•その商品と⽤途の⾯でおおむね同様のものであるが、型式、性能、品質等が著しく異なる新製品の発表により、今後通常の⽅法により販売することが出来ないようになったこと。
(2)「その他これらに準ずる特別な事実」とは
・破損、型崩れ、棚ざらし、品質変化等で、通常の⽅法によって販売することができない場合
・⺠事再⽣法の規程による再⽣計画認可決定による評価替えなど
評価損を計上するには、以上のような特定の事実に該当することが必要です。つまり単なる物価変動、過剰⽣産等による価値下落では認められないのです。
☆計上できる評価損の⾦額は以下の計算となります。
評価損の⾦額 = 棚卸資産の帳簿価額(取得価額) ― 時価(処分可能額)
(3)処分可能額はどうして決めるか
ここで、不良在庫の時価(処分可能額)をいくらにするのかが問題になります。
「⻑年の経験からこれぐらいなら売れるだろう」では適切な処分可能額とは⾔えません、その事を客観的に証明する必要があるのです。
例えば、不良在庫を⾒切り処分品としてバーゲンセールなどを⾏い売り出してみるのも⼀つの⽅法でしょう。そして実際に『この⾦額で売った』あるいは『この⾦額でも売れなかった』という実績を作るのです。この時の広告チラシやバーゲンの様⼦(値札のついた商品の陳列等)を写真に撮っておくのも有効な証明となります。また、商談の成⽴しなかった⾒積書等も売れなかった証明になるので捨てずに残しておきましょう。
・⾒切り処分や廃棄
もちろん、なかなか販売できない過剰在庫を、実際に仕⼊値より安く処分販売してしまえば利益は圧縮できます。現⾦収⼊が得られ、資⾦繰りに貢献します。
⾒切り処分価額でも売れない、あるいは正常品の価額に影響するため低価額で売ることが出来ない場合があります。このような時は廃棄することも検討しなければなりません。廃棄により余分な保管・管理コストが省けます。これらもある意味前向きな節税策と⾔えるでしょう。
廃棄処分する場合でも廃棄した証明となるものを残しておくことが必要です。
廃棄業者に依頼する場合であれば、領収書の他に業者からの請求書に廃棄物の品⽬、数量等を記載したものや、廃棄証明書などを発⾏して貰い保存しておいて下さい。
また、⾃社で処分する場合は、稟議書などの現場からの報告書類を整備しておき、焼却や破壊の状況などを写真に撮っておくようにしましょう。
税務調査では、調査官を説得できる根拠となる客観的な証拠資料がポイントとなります。
・2015年7月17日 配信