H27年度消費税法の改正
=新設「電気通信利用役務の提供」=
消費税法上、役務の提供が国内取引・国外取引のいずれに該当するかは役務の提供を行う者の役務の提供に係る事業所等の所在地で判断することと規定されてます。
つまり電子書籍の購入においては役務の提供者である電子書籍販売事業者の所在地により、国内・国外取引のいずれかを判定することになります。
よって、本体価格1,000円の電子書籍を購入する場合、
国内事業者から → 1,080円(国内取引として消費税8%込み)
国外事業者から → 1,000円(国外取引として消費税不課税)
と価格が異なってきます。
これでは価格競争するうえで国内事業者が不利だということで、平成27年10月1日から消費税課税取引に関わる内外判定の取り扱いが一部改正されることになりました。
改正後は電子書籍や音楽の配信やインターネットを利用した広告の掲載など「電気通信利用役務の提供」に限り、役務の提供を受ける者の所在地により国内・国外取引の判定を行うことになります。
つまり購入者の所在地が国内であれば
国内事業者から → 1,080円(国内取引として消費税8%込み)
国外事業者から → 1,080円(国内取引として消費税8%込み)
と同額になります。
逆に国内事業者が非居住者へ電気通信利用役務の提供を行った場合は、これまで輸出免税取引として扱われていましたが、改正後は国外取引に該当することになりますので消費税不課税取引として扱われます。
=リバースチャージ?=
海外事業者から電気通信利用役務の提供を受けた場合の消費税の取り扱いは、「事業者向け」か「消費者向け」かで異なります。
「事業者向け役務の提供」とは役務の性質や取引条件等から、その役務の提供を受ける者が一般的に事業者に限られるものが該当するとされています。この「事業者向け役務の提供」に該当しないものは「消費者向け役務の提供」となります。
まず「消費者向け役務の提供」の方の消費税の取り扱いについてです。
今回の改正により国内取引に該当するようになるものの当分の間、仕入税額控除は認められないことになっています。新たに納税義務者となる国外事業者からの適正な申告・納税が見込まれないまま仕入税額控除を認めてしまうと、不当に税収が減少してしまう恐れがあるためです。
ただし適正な消費税の申告・納税を行う蓋然性が高いと認められ国税庁長官の登録を受けた国外事業者から受ける消費者向けの電気通信利用役務の提供については、一定の請求書等の保存等を条件に仕入税額控除が認められます。
この登録国外事業者は平成27年7月以降、国税庁のホームページにおいて公表されるようです。
一方、「事業者向け役務の提供」についてはリバースチャージ方式によって消費税の申告・納税義務が課せられることになります。通常とは反対(リバース)に、役務の提供を受けた者に消費税の申告・納税義務が課せ(チャージ)られます。
改正後に事業者向けの電気通信利用役務の提供を受けた者は、その支払対価の額を課税標準として消費税の申告・納税を行うことになります。それと同時にその支払対価の額は仕入税額控除の対象にもなりますので、
本則課税選択者で課税売上割合が95%未満の方以外は納税額と仕入税額控除額が同額になり、新たな税負担は発生しません。
このことから簡易課税制度を選択している課税期間又は課税売上割合が95%以上である課税期間については、事務負担への配慮からリバースチャージ方式による申告・納税を当面免除する経過措置が設けられています。
また消費税免税事業者はリバースチャージ方式による申告・納税義務についても免除されます。
上記免除対象外となる消費税本則課税かつ課税売上割合が95%未満の方は新たにリバースチャージ方式による申告・納税と新たな税負担が生じる可能性がありますので注意が必要です。
以上、今回の改正について大まかな概要のみご説明させていただきましたがリバースチャージによる申告・納税義務が生じるかどうかに関わらず、適正な税区分処理をするためにも国外事業者から受けている役務の提供が
・電気通信利用役務の提供に該当するか
・上記該当すればそれは「事業者向け」に該当するか
・「事業者向け」に該当しない場合、相手先は登録国外事業者であるか
を確認する必要があります。
また国税庁から今回の改正に関するQ&Aも発表されているのでご参照ください。
https://www.nta.go.jp/shiraberu/ippanjoho/pamph/pdf/cross-QA.pdf
記H27.6.17
・2015年7月9日 配信